三菱「LED-UV乾燥システムセミナー」開催
●’09.7.17
去る7月17日(金)、菱栄機械ユーザー会としてに三菱重工業㈱本社(東京都港区)において最新の乾燥システムである「LED-UV乾燥システムセミナー」を開催しました。
当日は、午前10:30~12:30 午後は14:00~16:00まで2回に分けて実施、合わせて約40社60数名と多数の方にご参加頂き、最新システムに対する期待の高さを感じました。
また今回のセミナーは、先般三菱重工が発表させて頂いた『枚葉印刷機DIAMONDシリーズのLED-UV乾燥システムの販売開始』のニュース直後であり、一般のお客様へご説明する最初の機会となりました。
会場ではパナソニック電工様よりお借りした実物のLED-UVを展示させて頂きました。
また、三菱重工が独自に行ったLED-UVの印刷テストにおける以下の3種類の同じ絵柄の印刷サンプルを展示しました。
①通常の油性インキでの印刷
②従来の UVインキ・ UVシステムでの印刷
③LED-UVシステムを使用した印刷
パナソニック電工製「LED-UV」 3種類のサンプルを見比べる方々
三菱重工業㈱商業印刷機械営業課・森本課長より挨拶をさせて頂き、早速セミナーに入りました。
まずは、三菱重工業㈱印刷機械技術部・藤本次長による
「LED-UV印刷システムに最適な三菱の印刷機械(三菱重工のLED-UVへの取り組み)」
と題したセミナーをお聞き頂きました。
セミナーの様子
主な内容は、
1. 市場のニーズ
①データ入稿~製品納入までの早さが求められている。
②印刷物の部数は減少するが、種類は増加。売上高は減少傾向。
③LED-UV印刷システムの搭載により、生産性が高く、様々な仕事に対応可能な菊全サイズの印刷機へ適用。
新たなビジネスチャンスの創出
2. インキの乾燥
①乾燥装置 : UV波長域の光を発生できるLED(発光ダイオード)を使用。
②専用インキ : LED-UV乾燥装置の波長にマッチしたUV開始剤を使用。
乾燥装置にマッチしたインキで実現可能
3. LED-UV印刷システムの概要と特徴
①消費電力が少ない。
電力量は約11kw/hで従来の約1/4.5。
例えばプロセス4C印刷で、約78%の電気代削減が可能。(乾燥装置部分)
②付帯設備がコンパクトである。
(制御ボックスサイズ:約300W×550D×700H mm)
③オゾンが発生しないため、排気ダクトが不要。
④瞬時に点灯・消灯が可能である。
通電点灯で、即印刷が可能なことは、小ロット印刷には非常に有利。
⑤発熱が少ない。
⑥寿命が長い。LED-UVランプの寿命は、約15,000時間(従来ランプの約15倍)
メリットが多く、短納期対応のソリューションになりうる
LED-UV印刷と従来UV印刷の比較
乾燥装置とインキを以外は、従来のUV印刷の資材と共通
4. 実用化の為の技術課題
究極の目標は、「両面ジャケットレスLED-UV専用機」への適用
両面専用機TPへの従来UVの適用実績
(1) 樹脂・厚紙印刷は裏1、2色UVで多数実績あり。
(2) 商業印刷分野で、両面4C/4C、ジャケットレス、パウダーレスを実現し、短納期対応で成功されている印刷会社様もある。
更に、LED-UVの採用で,生産性向上を目指す
(1) DIAMOND300シリーズ(サイマルチェンジャーなど)との併用による乾燥まで含めたオンデマンドシステムの確立を目指す。
(2) 課題は、
① 乾燥性能として、後刷りの圧胴上(ジャケットなし)のインキ残り。
② 実用上問題ない光沢の確保。
↓
実機を使った印刷試験で「実用に対応可能」である事を確認!
インキの硬化性能特性評価
照射装置と紙面との距離が離れ、速度が速くなるほど乾燥しにくい。
しかし、インキにより、16200sph の400%(CMYK)部分でも完全乾燥しており、印刷直後に爪スクラッチ白紙摩擦転写しても問題ない。
乾燥までの時間と光沢との関係
(1) 最終印刷から乾燥装置へ入るまでの時間が長いほどインキ面の平滑度が良くなり光沢値も上がる。
(2) 2ユニット分以上空けても光沢は顕著に改善されない。
↓
実用的には、1ユニット分後に照射装置を置くのが良い。
TPを使った実験の結果、「両面LED-UV専用機」として、ジャケットレス、パウダーレスが実現できる。
5. 三菱のLED-UV印刷システム
先日プレスリリースをしたDIAMONDシリーズのLED-UV乾燥システムのご説明をさせて頂きました。
①三菱LED-UV印刷専用機(片面機)
LED-UV印刷のクオリティーを追及したLED-UV印刷専用機
*排紙部胴配列を従来のチェングリッパ式から変更する事で「ロングデリバリやシリンダー延長」を使用せず、機械の全長が長くならないという最大のメリットがあります。(両面機も同様)
【特徴】
- 乾燥待ち時間“ゼロ”・・・・・時間短縮・即次工程へ
- パウダー使用“ゼロ”・・・・・粉落ち事故解消・作業環境改善
- 裏移り&板取り時間“ゼロ”・・・・・棒積み可能・作業効率向上
従来UV印刷 | LED-UV印刷 | |
乾燥装置 | UV乾燥装置(GS、アイグラ) | LED-UV乾燥装置(パナソニック電工) |
インキ | UV印刷用(東洋,TOKA,DIC) | LED-UV印刷用(東洋,TOKA,DIC) |
コートニス | UV印刷用(東洋,TOKA,DIC) | LED-UV印刷用(メーカ開発中) |
ブランケット | 従来のUV印刷専用のブランケットが使用出来ます。 (例:Macdermid製 UV-Eなど) |
|
ローラ | 従来のUV印刷専用ローラが使用出来ます。 (例:テクノローラ トラストβ、明和ゴム MD-25など |
|
UV洗浄液 | 従来のUV洗浄液が使用出来ます。(例:東洋 ローラ洗剤Kなど) | |
印刷用紙 |
紙・アルミ蒸着紙 樹脂原反 |
紙 (アルミ蒸着紙・樹脂原反) |
②三菱LED-UV印刷専用機(両面機)
タンデムの特徴を生かした世界初の両面LED-UV印刷機
【特徴】
- 乾燥待ち時間“ゼロ”・・・・・時間短縮・即次工程へ
- パウダー使用“ゼロ”・・・・・粉落ち事故解消・作業環境改善
- 裏移り&板取り時間“ゼロ”・・・・・棒積み可能・作業効率向上
- セラミックスジャケット“ゼロ”・・・・・表裏印刷品質差を解消,交換作業無し
- 絵柄制約“ゼロ”・・・・・キズとコスレ解消・全面絵柄印刷可能
③三菱LED-UV印刷専用機(既設機への取付け)
現在保有の三菱枚葉機でもLED-UV印刷を実現できる
※LED-UV乾燥装置搭載ユニットを追設しない場合、LED-UV乾燥装置は最終色ユニット圧胴上に取付。この場合、印刷物の光沢が極めて小さくなります。
閑話休題 CO2の削減量
「LED-UVは、CO2削減にどれくらいの効果があるのですか?」
「三菱重工業株式会社 エネルギー・環境事業統括戦略室」の人に聞きました。
日本の場合(電力量は3章を引用.稼働:16時間/日,200日/年)
- UVの消費電力量 = 50kW×16hrs×200days = 160,000kWh/年
- LED-UVの消費電力量 = 11kW×12hrs×200days = 26,400kWh/年
- 省エネ量 = 160,000-26,400 = 133,600kWh/年
- CO2削減量
CO2排出原単位 = 0.418kg/kWh (CO2 emission 2008 IEAより)
CO2削減量 = 133,600kWh×0.418kg/kWh = 55.8 ton-CO2
→年間約56トンのCO2削減。
日本の2007年CO2排出量は、13.7億トン。人口は1.28億人ですので、10.7トン/人の排出量。
従って、「56トンの削減は、人間約5人分のCO2削減」というイメージです。
欧州全体も、おおよそ、10トン/人程度です。これでイメージがつかめましたか?
6. まとめ
1. LED-UVと三菱独自技術との融合で印刷会社様の課題解決
超小ロット、超短納期(印刷即加工出荷)対応の解決
(1) LEDーUVの立ち上がりの早さ、低電気消費(経済的環境性)
(2) DIAMOND機の技術「サイマルチェンジャー」など。
(3) TPの技術 両面1パス、ジャケットレス、パウダーレス。
2. インキの改良がめざましく、LED-UVは実用域に入っている
(1) 乾燥・耐摩擦性で問題なく最高速で印刷可能。
(2) 光沢は、1ユニット相当時間、乾燥開始を遅らせることで確保。
(3) 環境=経済性を実現出来る乾燥システムになる可能性が高い。
以上、CO2削減については昨年藤本次長がアメリカへ駐在していた際の体験話も交えたセミナーをお聞き頂きました。
休憩を挿んで、東洋インキ製造株式会社 ・印刷・情報事業本部・RC事業部 RCインキ販売部 田中治夫様による
「LED INKの現状」
と題したセミナーをお聞き頂きました。
主な内容は、
- UV INK国内出荷状況
- 何故 UV INKなのか?
- 印刷会社としての差別化技術
- 企業としての環境対応への配慮
- UV印刷の課題
- LED(発光ダイオード)技術の応用
- LED SYSTEMの特徴
- LED SYSTEMのメリット
- 電力コストの差額
- 職場環境におけるオゾンについて
- FD LED SERIESの特徴
インキラインナップ
紙用 「FD LED シリーズ」 (プロセス4色、中間色、OPニス)
フィルム用 「FD LED AD シリーズ」 (プロセス4色、白、OPニス)NEW - LED INKご使用にあたって
発光スペクトルが限られているため、UV INKの一種であるLED INKはUV INKの特性が顕著に現れる場合がある。
1.顔料特性による硬化性差異がUV INK比で出やすい。
墨、白については光透過率が悪い為、硬化性確保に苦慮。
2.膜厚(濃度)による硬化性差異がUV INK比で出やすい。
3.感光性が高いため、UVカット環境必須
印刷・インキ製造・調色
4.開始剤等使用原料の特殊性により原料コストが高い
5.ニス、白については黄変の抑制が必要。
上記課題については、現在当社は技術的に取り組み中であり、コーティングニスについても、近々発表を予定。
と言ったテーマについて、インキメーカーの立場からのLED-UVに対する取組み状況を報告して頂きました。
コーティングニスも含め、インキメーカーも非常に前向きにLED-UV用資材の開発に取組んでいる様子がわかりました。
最後に、ご出席頂いた皆さまからの質疑応答を行いました。
東洋インキ製造㈱田中様によるセミナー 質疑応答の様子
質疑応答でも様々なご質問が出され、また、セミナー終了後も印刷サンプルを見ながら熱心に三菱の技術員にご質問される方が多数いらっしゃいました。
私共も、皆様の「LED-UV」に対する関心の高さを再認識致しました。
インキ・ニス等のランニングコストが現状のUV用よりもかかる等のデメリットがありますが、従来の「UV印刷=厚紙・光沢(ニス)」といった概念からは全く違った「薄紙の短納期対策、パウダーレスによる不具合の解消」という新たなメリットが見えてきます。
使用される印刷会社様が増える事で当然ランニングコストも下がってくる事が期待できます。
最後に菱栄機械・野尻社長よりご挨拶をさせて頂きセミナーを終了しました。
「 三菱DIAMOND300シリーズLED搭載機」JGAS2009に出展
上記セミナーでもご紹介させて頂きましたが、三菱重工は、来る10月6~10日に東京ビッグサイトで開催されるJAGAS2009に、好評を得て発売中のDIAMOND300シリーズ菊全判5色機に「DIAMOND305LED」としてLED搭載機を出展する予定となっております。
4色機でも8色機でも(何色でも)わずか38秒で全色同時交換を実現した「サイマルチェンジャー」と「LED-UVシステム」により、超短納期対応のマシンを東京ビッグサイトでご頂けると思います。
詳細は追ってご報告させて頂きます。
沢山の皆様のご来場をお待ちしております。